treedown’s Report

システム管理者に巻き起こる様々な事象を読者の貴方へ報告するブログです。会社でも家庭でも"システム"に携わるすべての方の共感を目指しています。

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燃尽奮戦記―9話:顛末記?

結局、私は退職をしなかった。部署異動で話がまとまった。

前の部署とはあまり良好な関係とは言えない。社内で遭遇するとちょっと気まずい。
でも私自身はまあいいよね?と自分に言い聞かせている。
なぜなら、私は「退職した後の部署の行く末を見ることができる。」という本人にとって興味深くかつ唯一の気がかりな体験を手に入れることができた。
「死せる孔明生ける仲達を走らす」
されど孔明は死なず。
退職ではこれを手に入れることはできなかった。

 後日。そんな彼の元に電話が掛かってきた。
「メールの配信ができないんです。これどうなっているんですか?」
電話の向こう側では、元メンバーが語気荒くまくしたてる。
「これは八つ当たりと受け取っていただいて結構です。ええ八つ当たりですとも。」
おそらく電話の主である元メンバーは、さっそく何か動作不良にでも出会ったらしい。
冷静に落ち着いて調査項目と対処方法を提示した彼は、静かに電話を切った。
電話を切った時、無人の開発部屋でただ一人ちょっとほくそ笑んでいたことを知る者は誰もいない。
自分が居なくなった後の部署は混乱するのだ。そう思うと少し溜飲が下がる思いだった。
また私が居なくなったことで不足する知識は予算を上乗せすることで業者のノウハウを活用し代替しているようだった。メンバーも優秀なメンバーがそろっている。知識を補完してくれる存在があればどうにかなるという状況に見えた。
人が居なくなれば予算は出るものか、と思うと嫉妬にも似た感情は多少あったが、今の自分は違う部署の人間だった。それに対してとやかく思考を巡らせる必要はないのだ、自分の部署の自分の業務に全力を傾けるべきだ、と自分を言い聞かせていた。
と、同時に、"会社"という組織はやはり一人の社員が居なくなったとしても何かしらの方法で動いていくものなのだ、と再認識した。いくら余人をもって代えがたい、と評された人材であってもその人材が居なければ何かしらの手はあるものなのだ。
少し寂しさを覚えるが、未練があるわけではない。心のどこかで安心している自分もいた。

異動後の業務はプロジェクトのインフラ整備がメインだった。
それこそL2/L3スイッチやサーバキッティングなど、システムを稼働させるための基盤整備が主な業務となった。
いままでの延長線にあるとはいえ、今までそれほどやっていなかった技術も多かったが、逆に環境面で集中できたことが功を奏した。
と、いうのも、日中人と会うことがほぼない。
PMは部長兼務なので座席は業務側の部長席にある。他のプロジェクトメンバー2名も開発ルームより外出して開発会社やシステム設計をしている会社へ詰めることが多かった。
よって、開発ルームはほぼ無人、日中はフルタイムで1人、ということが多かったことは、心が荒んでいた私にとってはかえって好都合だった。
他者に割り込まれない形で一日じっくりと検証・動作確認・インフラサービスの作りこみができる。思えば入社してからこんなに集中できる環境はあっただろうか…と思い返してみれば、少なくともここ数年のプロジェクトは検証もそこそこに不完全な状態でのサービスイン、運用フェーズで稼働させながらの機能整備、という自転車操業的なリリースばかりだった。人も技術も時間も足りなかった点、最低限の要件を満たした状態でのリリースをせざるを得ない台所事情。そして最低限リリースゆえの運用フェーズでの手間。しかし"リリースした"という事実は上司にとって完了フラグを付けることになってしまい、自分の首は自分で締めてしまっていたのではないか?と自身を責めてしまいそうになる。

しかし、そんな心を乱しても、ここには他の第三者はいない。幾ら落ち込もうがイラつこうが八つ当たりの対象となる第三者はいないのだ。逆に八つ当たりをしてくる第三者だっていない。そういった意味でも実に心が救われる環境だった。

最初はPMであるY部長の信頼もなかった(はずの)ようだ。
「オレは”鳴り物入り”な人間は嫌いだ。”鳴り物入りで入ってきた”人間にロクな人材が居なかった。いままでロクデナシしか見たことない。」
などと、私に面と向かって発言し、何かを警告するかのようなY部長の態度も、小さな業務に少しずつでも結果を出すにつれ、次第に態度は軟化していった。
1年経つ頃にはすっかり打ち解けて、ランチを一緒に(部長の奢りで)行くこともあれば、喫煙所で居合わせればイライラしたY部長の愚痴(問題提起?)を聞くようにもなった。逆の言い方をすると、こういったコミュニケーションを取ってくれるようになった、というのは相応の親密度を要する関係性が築けている、と考えてよかった。
以前のシステム部門では生き馬の目を抜くかのような目まぐるしい業務環境とギスギスした上司-部下の関係性だったのだが、ここでは同じ会社とは思えないくらい一つ一つを丁寧にしっかりとこなすことができる。
部門長が違うだけで、こんなに部内の運営方法や部内での働き方が違うものか、という驚きと発見が異動したこの部署にはあった。

だがこれはこの翌年に、思わぬ形で終焉を迎えることになってしまう。

その時は、またしても冬枯れの肌寒い季節。
私を部署に拾ってくれた同期Aがある日、荒々しくドアを開け開発ルームに入ってきた。
そのドアの音に驚いた私はとっさにドアの方に振り向き、同期Aの姿を見つけると、
「何かあったのか?」
私は聞いた。
ユーザと揉めたか、はたまた部長と何か意見を戦わせるようなことがあったか…。
そんな予想を超越した答えが同期Aの口から返ってきた。
「オレ、会社辞めるわ。理由は言えないが、今日で辞めるわ。」

今日で、って…バイトじゃないんだから…。
何があったんだ?

 

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